「にゃ〜…」
「ふふふ…今日こそ、そのフワフワの毛に触れてみせる!」
「………」
「あぁっ…くっそーー!!…じっとしててよね〜…」
「なにしてんだ…」
「のぉぉおぉ?!(あと少しで猫に触れると思ったのにッ!!まったく誰よ…)」
私が奇声をあげたせいで黒猫はしげみに逃げ込んでしまった…
私はイラだちを押さえ後ろを向いた。
するとそこには……
「ね…あっ、流川くん…?」
「………」
「あぁ、猫を触ろうとしてたの」
あはは…っと愛想笑いしたけど流川くんは相変わらずムスッとしていた。
やっぱりあの猫にそっくり…
「休みの日なのに…ずいぶんと暇なんだな…」
「なっ…る、流川くんこそ…」
「…俺は部活の帰り…」
「…そうなんだ…じゃあね…」
私はまた黒猫を探し始めた。
…私は…
なんであの黒猫にこだわるんだろう…
そんなコトが頭の中で回っていた…
いつのまにかあの黒猫と流川くんを重ねていて…
黒猫を追って、流川くんを追っていた…
私は…もしかして流川くんが好きなのかもしれない…だからあの猫にこだわるのかも…
「にゃ〜…」
「あ…!!」
猫の声が聞こえた…
「………」
「あれ、流川くんまだいたの??」
猫はゴロゴロとのどを鳴らしながら流川くんの足にすりついていた。
「いいなぁ〜流川くんは気に入られて…」
「なぁ〜…」
「………も来い」
「えっ…逃げないかな…」
「知らねぇ…」
「え…まぁいいや」
私はゆっくり猫に近づいていった。
「あぁっ」
でもやっぱり逃げられた…。
「逃げられたな…」
「うん」
「…………」
「流川くん…」
「…?」
「流川くんは…逃げないでね…」
「逃げねぇよ」
―逃げないで―